【民泊とは】旅館業、民宿、ゲストハウス、バケーションレンタルとの違い
2020.12.23「民泊」が聞き慣れない言葉だったのも今は昔。今や民泊は広く知られており、すでに利用したことがある人も多いでしょう。
しかし、「旅館業」「民宿」「ゲストハウス」「バケーションレンタル」といったものと民泊との違いを正しく把握している人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、民泊と各宿泊業態との違いについて解説します。
民泊とは
民泊(みんぱく)は読んで字のごとく「民家に宿泊する」ことです。
法律上の正式名称は「住宅宿泊」などと言われています。
明確な定義はありませんが、「個人の住宅を活用し、旅行者等に宿泊サービスを提供すること」が一般に民泊と呼ばれるようになりました。
背景にはインターネットを介して空室を貸したい人、宿泊を希望する人をマッチングするAirbnbなどのサービスが拡大したことが挙げられます。
民泊に関わる法律
Airbnbが日本でサービスを開始したのが2014年。それ以前は民泊そのものが一般的ではありませんでした。
そのため、民泊事業者は「旅館業法」に従い営業することが義務付けられましたが、新たに登場した民泊ビジネスにはそぐわない点が多数ありました。
旅館業法は厚生労働省から営業許可が必要となるなど規定が厳しく、無許可で営業する民泊事業者が後を絶たなかったのです。
そこで誕生したのが住宅民宿事業法(民泊新法)です。民泊事業者は、2017年6月に成立したこの新しい法律に従うことが求められています。
また、一部地域では国家戦略特区法に基づく「特区民泊」を認めています。
それぞれの法律における民泊の主な違いをまとめました。
旅館業法(従来の法律) | 住宅民宿事業法(民泊新法) | 国家戦略特区法 | |
開始要件 | 許可 | 届出 | 認定 |
実施できる地域 | 全国 | 全国 | 一部経済特区のみ |
住居専用地域での営業 | 不可 | 可 | 可 |
営業可能日数の制限等 | なし | 年間180日以内 | 年間上限はないが、1回あたり2泊3日以上 |
最低床面積 | 3.3㎡/人 | 原則25㎡以上 | 3.3㎡/人 |
なお、マンスリーマンションなどは不動産賃貸業にあたります。
人を住居や施設に宿泊させるといった面は共通ですが、マンスリーマンションの場合、定期借家契約が必要です。
民泊新法のポイント
民泊新法の主なポイントは以下の通りです。
- 都道府県知事等へ届出を行う
- 設備要件を満たす
- 営業日数の上限は180日
まず、民泊新法のもとでは民泊事業を開始する前に都道府県知事等への届出が必要です。
従来の旅館業法では「許可」が必要で、営業施設の見取り図や構造設備の概要書などの書類を添付し、保健所による現場検査を受けなければいけませんでした。
それが大幅に簡素化され、参入へのハードルが下がったのです。
また、営業日数の上限にも違いがあります。民泊新法では営業日数は180日以内と定められており、181日以上の営業は認められていません。
民泊新法についてはこちらの記事をご参照ください。
民泊営業日数180日規制についてはこちらの記事をご参照ください。
他にも台所・浴室・便所・洗面設備といった4つの設備があることも条件の1つです。
国家戦略特区法のポイント
もう1つ重要な法律に、民泊事業を行う地域によっては押さえておきたい「国家戦略特区法」があります。
国家戦略特区とは、地域振興と国際競争力の向上を目的に指定されている経済特区です。
国内に数ある経済特区の中でも、以下の自治体は自ら条例を定め、「特区民泊」を認めています。
- 東京都大田区
- 大阪府
- 大阪市
- 福岡県北九州市
- 新潟県新潟市
- 千葉県千葉市
国家戦略特区法の下で民泊を始める場合、「認定」を受ける必要があります。
民泊新法の届出よりも少し手間がかかりますが、旅館業法の許可よりも遥かに簡単な手続きで始められます。
特区民泊には1回あたりの最低宿泊日数が定められているのも特徴。2泊3日以上の滞在が条件となります。
ただし180日以内といった制限はないため、特区で民泊を始めるなら特区民泊の方が収益性は高い傾向にあると言えます。
このように一口に「民泊」と言っても、どの法律に基づいているかにより開始要件や宿泊日数の制限、設備要件などが異なります。
民泊以外の宿泊形態
ここまでは「民泊」の話。民泊以外にも様々な宿泊形態があることはご存知の通りでしょう。
例えば旅館や民宿、ゲストハウスなどがありますが、これらの宿泊施設の違いを正しく理解しているでしょうか。
それぞれの特徴を踏まえ、民泊との違いを解説します。
民泊と旅館の違い
旅館とは、主に以下の特徴を持つ宿泊施設を言います。
- 1客室の床面積が7m²以上
- 客室の鍵の適切な受け渡しと宿泊者以外の出入り状況の確認ができる設備がある
- 適当な規模の入浴設備・洗面設備がある
- 共同用便所は男子用及び女子用の区分がある
民泊との大きな違いは、その設備規模です。玄関帳場(フロント)、男女別の便所といった比較的大きな設備を要するのが旅館です。
また、前述したように旅館は旅館業法に則って営業を行っています。
民泊と民宿の違い
民宿も旅館業法に則った営業を行う宿泊施設ですが、法律上の「簡易宿所」に該当します。
旅館業法には「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設で人を宿泊させる」と定められており、以下の特徴を持ちます。
- 客室延床面積は33㎡以上(宿泊者数10人未満なら3.3㎡/1人)
- 玄関帳場(フロント)に関する要件なし
旅館よりも小規模で、条件が少ないです。そのため、小さな建物で家族経営する民宿が日本中にたくさんあります。
利用者から見れば民宿と民泊の違いは曖昧ですが、住居専用地域で営業ができない、営業可能日数に上限がないといった点が異なります。
民泊とゲストハウスの違い
ゲストハウスも、民宿と同じ「簡易宿所」です。旅館業法に従って営業許可を得ている施設です。
そのため民宿とゲストハウスの違いはほとんどなく、「事業者がどちらを名乗るか」で線引きされると言えます。
ゲストハウスの主な特徴は、共用のリビングがあること、ドミトリー(相部屋)があることなどが挙げられます。
旅行者同士のつながりを重視するのがゲストハウスですね。
こちらも民泊とは営業できる場所(住居専用地域不可)や営業可能日数などの面で違いが見られます。
民泊とバケーションレンタルの違い
海外では「バケーションレンタル」も一般的です。中にはホテルに並ぶ宿泊手段として認知されている地域もあるほどです。
バケーションレンタルも、いわば広義の民泊です。オーナーが使用していない期間に別荘やコンドミニアムを貸し出す手段です。
国内でも民泊新法の施行とともに大手旅行サイトなどがバケーションレンタルを提供し始めました。
新しい旅の形としてバケーションレンタルが日本で広く認知される未来はすぐそこに来ているのかもしれません!
「民泊って何?」という問いから、旅館・民宿・ゲストハウス・バケーションレンタルとの違いまで、疑問は解消できたでしょうか。
利用者から見ればどれも宿泊施設ですが、従う法律や規定が異なるため、期待できるサービスや設備に違いがあります。
また、宿泊事業を始めたいならこれらの宿泊施設の違いは必ず知っておきましょう。どの法律に従うべきか?を押さえておかなければ、罰則などの手痛い代償を払う羽目にもなりかねません。
それぞれの特徴を知り、あなたの求める旅に合った宿泊施設を選んでくださいね。
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